自閉スペクトラム女子に精神障害者枠の会計年度任用職員の仕事は向いている!現役の体験談

自閉スペクトラム障害の女性である私が会計年度任用職員(臨時職員)として7年働いてみた感想を書いていきたいと思います。

自己紹介
名前:oyuki
31歳女性。5年ほど前に自閉スペクトラム症(ASD)と診断を受けました。
役所で会計年度任用職員(臨時職員)としての業務経験は延べ7年くらいになります。
1年ほど窓口課で市民対応業務を経験し、現在は人事課で6年以上事務員として働いています。
具体的な業務内容は職員の採用や健康管理、そのほか内部管理に関係する内容のデータ入力・単純作業の仕事をしています。

会計年度任用職員とは

業務繁忙期、正規職員の産休・育休などの欠員があった時に臨時で雇用される一年契約の地方公務員アルバイトです。
昔は特別職非常勤職員、臨時的任用職員などと呼ばれていたのが、令和2年4月に法改正され全国で一斉に会計年度任用職員に統合されました。

アルバイトであっても健康保険・厚生年金・雇用保険などの各種社会保険がしっかりしていることや、
有給休暇・特別休暇をとれる対象となっていたりするので待遇面での安心感があります。

会計年度任用職員にはフルタイムとパートタイムの2種類がある

フルタイムパートタイム
勤務時間週合計38時間45分
(一日7時間45分×5日)
週合計38時間45分以下
副業・兼業不可OK
昔の名称特別職非常勤職員等一般職非常勤職員、臨時職員等

パートタイムでは出ないところがほとんどのようですが、自治体によってはボーナス・時間外手当・退職金も支給されます。
また、公務員は原則兼業や副業は禁止ですが、フルタイムで働かないパートタイム勤務のみ兼業や副業okです。(届け出が必要な場合もあるので人事課に要確認です。)

しかし、会計年度任用職員のデメリットとして、給料が安いです。
なので私がおすすめするのはこの2種類のうち、兼業副業も可能なパートタイム契約です。

なぜあえて精神障害者枠の会計年度任用職員をおすすめするのか

私が長く働き続けられている理由について、

  • 労働環境・人間関係が安定している
  • ルーチンワークが多い
  • 採用されやすい
  • 障害特性に配慮してもらえる
  • 職員間の交流を強く求められない
  • 同じ環境で長く働く事ができる

があげられます。細かく見ていきましょう。

労働環境・人間関係が安定している

公務員は外部の人と関わる機会は少なく、いつも同じ人と仕事をしていくため、安定しています。
自治体にもよるようですが、会計年度任用職員は配属部署の希望をある程度出せるのが嬉しいところです。

対人コミュニケーションを苦手とする私は採用時の面接で内部管理系の部署と希望を出し、現在も希望通りに働けています。
自分で環境を選択し働けるので私としては過ごしやすい環境だなと感じました。

ルーチンワークがメイン

会計年度任用職員が任される作業はコピーや書類封入等の単純作業・データ入力・転記等ルーチンワークが主です。
同じ作業を繰り返すことを得意とするASDにとっては続けやすい仕事内容になっています。

私もこれらの作業が大好きなので過集中になりながら毎日楽しく取り組んでいます。

採用されやすい

なぜ障害者枠が存在するかというと、法定雇用率というものが関係してきます。
以下厚生労働省のHPの引用です。

1.障害者雇用率制度
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。(障害者雇用促進法43条第1項)

厚生労働省HP

法定雇用率達成のため、障害者枠で積極的に募集をかけている自治体も多く、採用されやすいといえます。
そして、障害者枠なので通常よりも受験者が少なくなるということもあり、それなりに競争率も下がります。

障害特性に配慮してもらえる

面接にて障害特性を説明し知ってもらった上で採用されるので、仕事上で配慮してもらえます。

私も現在、ありがたいことに障害特性に配慮していただいている中でお仕事ができています。
具体的には接客・電話応対の対人コミュニケーションをしなくてもいいこと、作業中の耳栓の着用の許可、仕事の指示はメモで行うこと等々・・・
困り感が少なく仕事ができるというのはありがたいことだと感じました。

職員間の交流を強く求められない

これがメリットなのかどうなのか、といったところではありますが、職員同士の交流は薄めです。

公務員の風潮に閉鎖的な人間関係があり、会計年度任用職員と正規職員との間にはなんとなく心の壁があります。
なので部署内の交流のための飲み会や懇親会・忘年会などは誘われないことも多いです。

心の壁の正体が何なのか現役正規公務員(親です)に聞いたところ、「会計年度任用職員は正規職員から見て市民だと思っているんだよ」と。
それを聞いてすごく納得がいきました。仕事仲間ではなく外部の人間という認識なんですかね。接し方もいつまでもどこかよそよそしい感じなんですよね。

しかし、職場以外の交流や飲みの席が大の苦手なASD女子にとっては、その距離感がとてもストレスフリーなのでした。

同じ環境で長く働く事ができる

これは所属の課がアルバイト枠を毎年用意している場合に限るという話ではありますが、雇用継続時の面談で働きたいという意思表示をすれば、同じ課で働き続けることができます。

正規公務員は人事異動で2、3年ごとに別の部署に異動するというルールを設けている自治体も多いかと思いますが、アルバイトである会計年度任用職員は異動の対象ではありません。
また、課にとっても「継続してアルバイトを取るのであれば即戦力の人を」と考えているので、継続の意思を伝えると大抵継続となります。

環境が大きく変わることに不安を抱える私には安定して働くことができるので、これはメリットでした。

障害者枠で正規職員になるのもアリ!ただし…

正規職員になるメリット

正規職員になった場合のメリットと考えたものを挙げると、

  • 民間の障害者枠と比較して給料が良い・安定している
  • 休暇が多い
  • 障害特性を知ってもらった上で雇用してもらえる

民間の障害者枠と比較して給料が良い・安定している

民間企業では正社員と障害者枠の給料にかなりの差が設定されている場合がありますが、公務員では給料の差は殆どありません。
厚生労働省総務省のHPを参考にすると、

30時間以上労働の精神障害者の平均月収は189,000円、地方公務員の平均月収は358,878円

なので民間企業の精神障害者枠と比べて収入は多いです。
また、民間企業とは違い、業務成績がどうであれ夏と冬のボーナスは毎年必ず出ます。ありがたいですね。

民間企業よりも休暇が多い

休日は年間150日程と多いです。
カレンダー通りの週休2日の通常のお休みに加え、自由に休める休暇に夏季休暇5日・有給休暇20日ほどあります。
これは民間企業よりもかなり多いようですね。
部署による部分もありますが、公務員は休暇も取りやすいです。

自由に休める日数が多いのはASDにありがちな急な体調不良も安心できる部分かなと思いました。

正規公務員は自閉スペクトラムの特性に向かない部分もある

私が正規公務員に不安を感じたものを挙げてみました。

  • 採用後十分なサポートがあるかはわからない
  • 適応力とコミュ力が最重要スキル
  • 毎年が運ゲーの人事異動

採用後十分なサポートがあるかはわからない

まだまだ精神障害者を対象とした採用を行っている自治体は限られており、募集があったとしても精神障害者の受け入れ体制が整っていない場合が多いです。
それはなぜなのかというと、雇った前例やデータが少ないからです。
採用後も精神障害者枠の職員をどう扱ってよいかよくわかっておらずまだ試験的なんですね。

うちもそうですが、長く実施してきた身体障害者枠の職員の環境づくりや体制はしっかりしているのに、精神障害者枠職員については働くにあたっての配慮の義務化やマニュアル化はされていないことも。
配属後のケアや指導がないため、本人だけではなく配属先がとまどっているというようなパターンもあります。

人事課での経験上、合わなくなり離職していく精神障害者枠の職員や、周辺の誰かがカサンドラ症候群になるなどちらほら見てきました。
可能ならば、安心して労働できるような仕組みづくりができているのかをリサーチしてから働くことをおすすめします。
私はこれが一番ネックとなり今の職場で障害者枠の正規職員を目指すことはありませんでした。

適応力とコミュ力が最重要スキル

公務員は2、3年に一度の部署異動がありますが、目まぐるしく環境が変化するので適応力が高くないと持ちません。
頻繁な部署異動のたびに人間関係が強制リセットされるので、素早く人間関係を構築するためのコミュ力はとても重要です。
限られた時間で職員に一体感を持たせたいと考える上司も多く、新年会や忘年会などの各種飲み会や結婚出産祝い、バレンタインデー等を決まりごととしてやっている部署はやはり多い印象です。

多い部署ならとにかく頻度が多いです!市民課では月一以上で何かしら交流イベントがありました…
その他、部署ごとに謎習慣や暗黙のルールがたくさんあるのですが、守らなければ確実に浮きます。
環境の変化や無理な対人コミュニケーションが大きな不安とストレスになりやすいことや、あいまいなこと・空気を読むことが苦手なASDには厳しい環境と言えます。

人事異動

人事異動は絶対で、マッチしない仕事もこなすことを求められる部分があることもASDに厳しいと感じたポイントです。

人事異動で一度決まった部署を変える事はほぼ絶対にできません。ゴネても無駄です。
個人都合での異動は特例で対応してもらえるケースもありますが、持病悪化で現在の業務が遂行できない、重度の鬱病になってしまった等どうしようもない事情でないとめったにありえません。

障害特性に配慮がなく合わない部署に入ってしまうと逃げたくなりますが、苦労して正規公務員となったわけですから、簡単にはなかなかそうも行きませんよね・・・

まず会計年度任用職員として働いてみる

正規公務員は民間企業と比較して休日と収入が多いのは間違いなくメリットです。
可能であれば正規職員に挑戦する前に一度、非正規職員として働いてみて様子をみるのをおすすめします。

私も実は正規職員になるか悩んだ時期もありましたが、働いているうちに正職員として長く働く未来が想像できないということもあり、挑戦は見送りました。
もし正規として働くなら「長く安心して働いていける環境」を一番に求めていましたので、持ってる希望と合わなかったというわけですね。
私が実際に会計年度任用職員として働いてみて、上記のような発見もあったので、お試し期間というのは無駄ではないと考えます。

おわりに

発達障害を抱えていると、様々な困り感がある中で自分に合う仕事を探すのが大変ですね。
そんな状況だったとしても、長く安定して働ける仕事があるのはありがたいことだなと考えております。

精神障害枠で会計年度任用職員を募集している自治体は限られているかもしれませんが、見つけたら挑戦してみてください。

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